2)発達障害のある学生が、内定後から入社までにやっておいた方がいいこと
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
「1)発達障害のある学生が、内定後から入社までにやっておいた方がいいこと」の続きになる。
前回、内定後に最もやっておいた方がいいことは「好きなことをやる」ことだと書いた。また、単位取得、卒業論文、資格試験、アルバイトなどで忙しい方も多いだろう。
発達障害のある学生が入社までにやっておくべきこと
だが、発達障害がある学生の場合は、同時にやっておいた方がいいことが3つある。
(1)ビジネスマナー学習、(2)コミュニケーション体験、(3)銀行口座準備だ。
この3つは、社会人として求められるにもかかわらず、発達障害のある方が苦手としていることなのだ。
ビジネスマナー学習
やはりビジネスマナーは大切だ。発達障害に理解のない方の場合、ビジネスマナーができない時点で”社会人としてアウト”と見なす人が多いのは残念ながら事実だ。
また、発達障害に理解があって配慮を受けることができたとしても、ビジネスマナーがあることによって、”仕事仲間”に入れてもらえるケースが多いのだ。
※詳しくは『発達障害があるのであれば、余計にマナーを身につけた方がいい』を参照ください。
しかし、発達障害のある方には、ビジネスマナーが苦手な方が少なくない。また、ビジネスマナーを身につけるのが遅い方も見られる。
私は、社会人になった最初の一年はビジネスマナーがうまくできないことに悩んだ。同期がどんどんビジネスマナーを身につけていくのに、私はなかなか身につかなかった。そのせいか、比較的優しい方が多い会社ではあったが、明らかに私のことを「使えない奴」として見捨てる先輩もいた。
実は今でもビジネスマナーは得意ではないし、正直な話”バカらしい”と感じるマナーもある。
しかし、仕事をしていく上では、ビジネスマナーができた方が有利だ。というより、ビジネスマナーができないことの不利は相当大きいと言える。
だから、内定後にビジネスマナーを少しは勉強しておいた方がいい。と、言っても、ビジネスマナーは現場で実践しながら身につける要素が多い。
そのため、私は内定後にビジネスマナーの本を3冊読むことをオススメする。3冊読めば、なんとなく重要なところがわかり、そしてその重要なところが記憶に定着するからだ。まずは知識として、マナーの形とその必要性が頭に入っていた方が、入社後の成長が早い。
かといって、ビジネスマナーを使えるようになるために学生時代に実践する必要性までは感じない。まずは3冊を目指してマナー本を読んでみよう。それが入社後にビジネスマナーを身につける上で役に立ってくるはずだ。
コミュニケーション体験
次にコミュニケーションであるが、発達障害のある方の課題は「コミュニケーション」であることが多い。そこで、社会人としてのコミュニケーションを体感しておく機会を作っておきたい。
あえて”社会人の“と付けたのは、学生同士のコミュニケーションと社会人のコミュニケーションは種類が異なるからだ。特に、仕事や作業を共に行うためのコミュニケーションは、学生のうちはあまり体感する機会がないかもしれない。
社会人としてのコミュニケーションをとるためには、アルバイトをしたり、ボランティアや地域活動に参加したりすることが考えられる。
すでにアルバイトなどで多数の人と仕事でのコミュニケーションをとっている方は新しく体験する必要は特にないだろう。しかし、不特定多数の人とあまりコミュニケーションをとったことがない方は、思い切ってチャレンジしてみて欲しい。入社してからの違和感が少なくなるだろう。
もちろん、そこでうまくコミュニケーションのできない自分と出会うかもしれない。その発見も今後の成長のために大きな気づきになる。今のうちに、フルタイムで働くコミュニケーションをとる前の練習をしてみよう。
銀行口座準備
最後に銀行口座についてだ。大学生のうちに「貯金口座」は必ず作っておこう。そして、自動引き落とし機能などを活用し、毎月自動で貯金口座にお金が貯まるようにしておこう。
発達障害のある方には、貯金が苦手な方が多い。例えばADHDで衝動性が強い方などは、ついついお金を遣い過ぎる傾向にある。社会人になって自分で給料をもらうようになってからも、お金を遣い過ぎて貯金ができないという事態に陥ることのないよう、今のうちから準備をしておくのだ。
なにしろ、貯金は精神的余裕につながる。私は過去に何度かパワハラにあっているが、それはいずれも貯金がない時期だった。そのため「もしここで辞めたら生活が困る」と感じて、パワハラを受けても耐え続け、最終的には精神がボロボロになってしまった。
もし何ヶ月かを過ごせるだけの貯金があれば、仕事を急に辞めてもすぐには困らない。
もちろん仕事をすぐに辞めることはオススメしないのだが、貯金があることでの「辞めてもすぐには生活に困らない」感覚が精神的な余裕をもたらしてくれるのだ。
私も今では少しは貯金を作って、仕事が全てなくなっても数ヶ月は過ごせる。その余裕があるからこそ、クライアントに無理な依頼を言われても断ることができるようになった。
内定後から社会人になるまでの間は短い。まずは好きなことをやった上で、将来の自分のための時間も少し作ってみてはどうだろうか。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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