発達障害をオープンにするべきか?
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
オープンにするべきか否か。多くの発達障害当事者は悩んでいる
「発達障害をオープンにする」
これは、発達障害当事者にとって、とても難しい問題だと思う。
なぜなら、オープンにすることのメリットとデメリットが予測できないからだ。
発達障害に対する世間の認知が高まってきたとはいえ、まだまだ発達障害のことを知らない人は多い。
そして、発達障害という言葉は知っていても、発達障害を正しく理解している人は少ない。
よって、発達障害をオープンにするとき、相手の発達障害に対する理解とその人の価値観次第で、全く異なる反応が返ってくる。そして、オープンにするまで、反応が予想できない。
私の場合、これは非常に怖い。
特に、恋愛や仕事など、自分にとって大切なものであればなおさらだ。
(このあたりは、個人差があると思いますが)
私の場合、社会人になってから自分が発達障害であったことを知った。
それを当時の彼女や上司にオープンにするかどうかは深く悩んだ。
結果的に発達障害をオープンにし、両者とも応援してくれたことはとても嬉しかった。
(ちなみに、当時の彼女は今の妻です)
だが、いい反応ばかりではなかった。
発達障害であることをオープンにした結果、嫌な思いをしたこともある。
変な噂を立てられたり、甘えだと決めつけられたり、うまくいっていた仕事をいきなり減らされたり、などだ。
発達障害をオープンにするべきか?
では、オープンにするべきか。正直なんとも言えない。
繰り返しになるが、オープンにしたときのメリットとデメリットが予測できないからだ。
私は現在、自分の障害特性を仕事関係者にできるだけオープンにしている。
もちろん、ある程度関係性ができた人に対してだが。
オープンにする理由は<発達障害のない方へ(1)>にも書いたが、理解してもらいたいから。
ADHDの弱点がある人だと知ってもらうことで、自分の苦手部分のハードルを下げたいから。
その上で、私が発達障害を持つことを聞いたときの反応を書きたい。
この反応で、オープン後、配慮が得られるのかが予測できることが多いように感じるからだ。
あくまで私の経験からきているものなので、参考程度に。
発達障害をオープンにした時の反応
「ふーん」「へー」「そうなんですね」
発達障害の知識がない人が多い。あまり深くは捉えられない場合が多い。
「確かにそうかもしれないね」「納得できる」
発達障害の知識がある人の反応。こちらの特性への配慮を得られやすい。
「見えない」「分からなかった」
私は自分の特性が問題にならないような仕事を目指しており、ADHD特性である多動・不注意要素をできる限り見えないようにしている。
私から伝えて初めて気づく人も多い。これだけだとその後の反応は予想できない。
「誰でもそういう傾向ってあるじゃないの?」
ある意味正論だが、発達障害について理解するつもりがない。
配慮はあまり期待できそうにない。
「私もそう」「私にもそういう部分ある」「(未診断で)俺もADHDだ」
この反応をする方の一部は、障害特性に理解を示し、配慮に積極的だ。
他方で、この反応をする方の一部は、障害特性を「言い訳」と見なす傾向があるように思う。
後者の場合は全て「言い訳」に捉え、「改善できないお前が悪い」という考え方をされる場合がある。このタイプとの仕事は辛かった。
他にも色々な反応があった。
が、反応から色々なことがわかるので、よく見ておこう。
そして、オープン後しばらくは反応・その後の関係性・対応の変化をよく見ておこう。
オープンにしたことが良かったかの判断を下すのはそれからでいいと思う。
発達障害をオープンにされた場合は?
逆に、友人・知人・同僚・恋人・部下などから発達障害をオープンにされたらどうすればいいのか。
まずは、発達障害をオープンにされたということは、
「あなたをある程度信頼している」「あなたを頼っている」
ということだと感じてもらいたい。
発達障害は多くの方にとってナイーブな問題なので、それをあなたに打ち明け、オープンにしたということは、あなたはある程度相手から信頼されているということだと思う。
次に、なぜオープンにしたのかを確認してほしい。
オープンにすることはその奥に何か理由がある場合が多い。
「配慮してほしい」「ただ知ってほしい」「今後を一緒に考えてほしい」
などがあると思うが、動機を確認することで、対応が必要な場合に動きやすくなる。
そして、対応が必要であれば何か行動を起こしてほしい。
最後にどうしても知っておいて欲しいのは、オープンにされたときの反応、その後のあなたの行動は、とてもよく見られているということだ。
オープン直後は、オープンにした側はどうしても不安になる。
そのときのあなたの反応・行動次第で、あなたは彼にとって「強い味方」「裏切り者」どちらにもなり得る。
人によってオープンすることへの重さは違えど、それほど人によっては発達障害をオープンにすることは大きな問題になることがあるのだ。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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