発達障害のある大学生が楽に大学生活を送るために大切なこと
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
発達障害傾向のある大学生は、大学生活で急に壁にぶつかることがある
私の現時点での主な仕事は、大学講師である。
ありがたいことに、さまざまな大学で多くの学生と関わることのできる毎日を送っている。
そんな中で、発達障害傾向にあると推測される学生と出会うことは少なくない。
苦労の種類はさまざまだが、彼らが大学での生活に苦労をしているシーンにもよく遭遇する。
大人数の前で講義を行う講師である私は、彼らの力にあまりなれず、悔しい思いをすることも多い。
発達障害のある方の中には、小・中・高とあまり問題にならずに生活してきても、大学生活で急に壁にぶつかるケースもある。
そういう方は、なぜ大学で苦労をするのか。
高校までは、いつもの教室で、同じクラスのメンバーと行動し、決められたカリキュラムがあり、担任の先生が管理してくれた。
一方、大学では、毎回違う教室で、授業ごとに異なるメンバーと授業を受け、カリキュラムも自分が決め、すべて自分で管理していかないといけない。高校までと生活が全く異なるので、その変化に対応できずに苦しむ方も多いようだ。
大学内で味方を見つけよう
では、発達障害のある大学生が、楽に大学生活を送るためには、どうしたらいいのか。
そのためのコツの一つは「大学内で味方をつくること」である。
具体的には困ったときに相談できる人、情報を教えてくれる人をつくること。
味方をつくるだけで、大学生活がずいぶん楽になる。
では、どんな人を味方にするといいのか。大きくは3タイプに分かれる。
1)教員(先生)
大学の講義関連のことで一番相談しやすいのは、何と言っても大学の先生だ。
ゼミの先生など相談しやすい先生が一人いると、講義関連で困ったときにアドバイスをいただける。
2)大学職員
講義以外での困ったことについては、大学職員の方に相談することができれば効率的である。
特に、学生課、障害学生支援部署、就職支援部署(キャリアセンターなど)の方々は、学生からの相談対応を一つの業務としている場合が多く、相談しやすい。
また、職員と言えるかは曖昧だが、大学内にいるカウンセラーの方に相談をするのも有効である。カウンセラーの方々は、話を聴くプロなので、話しやすいことが多い。
3)同じ学部の友達
それぞれの講義については、同じ学部の友達が一人でもいればずいぶん楽になる。休んでしまった講義に関する情報を教えてもらう、メモし忘れたレポートの締切日を教えてもらうなど、同じ学部の友達が一人いれば、必要な情報が漏れることが減るのだ。
このように、相談しやすい教員・職員・同じ学部の友達がいれば、大学生活がぐっと楽になるはずだ。
ぜひ相談できる仲間を増やしていってほしい。
発達障害のある大学生が、大学内で味方をつくるときの注意点
ただし、注意点が2点ある。
1)味方を選ぶこと
相談をすること、情報を聞くことに対して、喜んで対応してくれる人もいれば、イヤイヤ対応をする人もいる。喜んで対応してくれる人にはどんどん相談をしていっていい。しかし、イヤイヤ対応をする人に繰り返し聞くと、お互い辛い思いをすることになる。
人を選ぶ必要があると思う。
2)頼り過ぎない
喜んで対応してくれる味方ができたとしても、その人に頼りっきりになり、依存してしまうことはオススメしない。
同じ人に週に何度も相談する、何回もしつこく連絡する、などを繰り返すと聞き手側が辛くなってきてトラブルにつながる可能性がある。
教員・大学職員の方の場合、仕事が忙しい中で週に何度も来られると、本来の仕事が進まないことによるイライラが発生してしまうということもあり得る。また、大学の友人の場合は、何度も相談されると、相談された側が精神的に辛くなり、距離を置かれるケースもある。
私自身も、大学生のとき、一部の友達に依存しすぎて距離を置かれたことがある。また、逆に依存されたことが辛くなり「今後、私に電話をしないでほしい」と言ったこともある。
発達障害のある方には人間関係のバランスをとることが難しい方もいるだろう。しかし、長期的な関係を構築するためには、相手と適切な距離感を取る必要がある。もし、どれぐらい相談していいのかわからないのであれば、1週間に1回・30分までをと目安を設けるといいだろう。
相談できる人を作り、適度な関係を作っていってほしい。
そうすると、大学での生活がかなり楽になるだろう。
大学生向け就職活動支援プログラム「働くチカラプロジェクト」
働くチカラPROJECTは、発達障害のある大学生・短大生・専門学校生やコミュニケーションに苦手さのある大学生・短大生・専門学校生を対象とした就職活動を支援するプログラムです。2012年の開始から2018年までに、380名の皆様にご参加頂いています。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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