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発達障害のある方の金銭管理術(3)~浪費をいかに減らすか

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

3回に分けてお届けする「発達障害のある方の金銭管理術」
前回は、金銭管理を行うためには、お金を「出費、浪費、投資、貯蓄」の4つに分類すること、使うお金がどの種類に当たるかを考えることについて説明した。(発達障害のある方の金銭管理術(2)~金銭管理の原則~

発達障害のある方が金銭管理を行う上で、最も重要で最も難しいのは、浪費を減らすことだと思う。
3回目の最終回は、発達障害のある方が浪費を減らす方法を、私の経験から効果があった3つの例を挙げてみたい。

金銭管理

発達障害のある方が浪費を減らすには

私は以前、収入の割に浪費がとても多かったので、どのように浪費を減らすか、自分なりに様々な取り組みをしてきた。
現状でまだまだ浪費が多いものの、少しずつは減らすことができている。全ての人に当てはまるかは分からないが、私にとって効果があった浪費を減らす方法は3点だ。

✅ 出来るだけ現金で支払う
✅ 自分の意思力が下がる瞬間は誘惑に注意する
✅ 体重計に乗る(食べ物限定)

以下、1つずつ見ていく。

出来るだけ現金で支払う

私はクレジットカードやスマホ決済サービスを使わない。クレジットカードやスマホ決済サービスは非常に便利だ。最近はキャッシュレス化が進展しており、現金を使わないことが少しずつ一般的になってきている。キャッシュレスにすることでポイント還元もあり、スマホ決済アプリは支払いが楽にできるというメリットもある。

しかし、クレジットカードやスマホ決済サービスには、発達障害のある方にとって致命的な弱点がある。それは、お金を使ったという感覚が弱いことと、管理が面倒であることだ。
クレジットカードやスマホ決済サービスは、お金を使ったという感覚が現金に比べて弱い。そのため、お金を使ったという気分になりにくい。衝動性が高かったり、何か物事にハマりやすかったりする場合は、お金を使うハードルが下がることなる。
また、管理が面倒であるという点は、クレジットカードであれば使った金額がすぐには分からないというデメリットがある。スマホ決済サービスは残額がわかるものの、現金、口座に加えてスマホ決済サービスがあると、管理しないといけない先が増える。
管理が得意な方ならいいが、管理を苦手としているのであれば、新たな管理先を増やすことはお勧めできない。

自分の意思力が下がる瞬間は誘惑に注意する

浪費を食い止めるためには、意思力が必要になる。衝動性の高いADHDのある方は特に意思力が重要になる。意思力が下がる瞬間は浪費が多くなる。だからこそ、意思力が下がる瞬間を作らない、または意思力が下がる瞬間は出来るだけ誘惑が多い場所には立ち寄らないことが重要だ。

私は酔ったり疲れたりすると意思力が極端に下がる(これは同じ方も多いと思う)。また、仕事でうまくいった瞬間も気分が高揚し、意思力が下がる瞬間だ(これは同じ方はそこまで多くないのでは?)

だからこそ、私はあまり外でお酒を飲まないようにしている。過去、お酒を飲んで某家電量販店に行き必要のないパソコンの2台目を買い、翌日強く後悔した事があるからだ(妻に激怒されたことは言うまでもない)。
それからは外でお酒を飲むことは控えているし、飲んだ後は誘惑の多い場所(家電量販店や本屋)には行かないようにしているし、通販サイトも極力見ないようにしている。

体重計に乗る

食べ物に対する誘惑に対抗するのは本当に難しい。私とリアルであった方はすぐわかるが、私は食欲を抑えることに困難を感じている。食べ物に対する衝動性を食い止めることが困難なのだ。ダメだとは分かっていても、どうしても食べ過ぎてしまう。

だから、体重計には毎日乗ることにしており、苦手ではあるが出来るだけ記録をつけるようにしている(レコーディングダイエットみたいなイメージ)。
そうすると、食べることに対する罪悪感が増してきて、少しではあるが、食べることに対する浪費が減ってきている。

発達障害のある方が浪費を防ぐ手段は人の数だけあると思うが、私が実際に浪費を減らすために意識し、少しは効果があったものを紹介した。

ちなみに、発達障害のある人が浪費を減らし、適切な金銭管理をするために最もいい方法がある。それは、発達障害のない、最も信頼できる人に金銭管理を任せることである。
そうして、働いた分はお小遣い制にすることが、余分な浪費を抑えるために一番いい方法であることは間違いないと思う。

ただ、他人に財布を預けることは勇気がいる。私は出来るだけ妻に多くのお金を渡すことで、半分財布を預けているが、完全に財布を預けているとは言えない。
フリーランスである私は、毎月入ってくるお金が異なる。また、好きなことを仕事にしているので、例えば仕事に関連するセミナーに参加する場合、私としては趣味(浪費)と実益(投資)を兼ねているつもりだ。
しかし、妻から見たら趣味(浪費)にしか見えないことも珍しくない。もし、「妻に財布を預けると、投資のためのセミナーに参加できないのでは」という思いがあり、なかなか妻に財布を預け切る勇気がないのだ。

いずれにせよ、浪費を減らし、適切な金銭管理をすることは、発達障害のあるなしに問わず、簡単なことではない。

ただ、自立した生活を送るために、金銭管理はどこかでは直面せざるを得ない問題だと思う。浪費を減らし、投資や貯蓄を増やすための方法として、少しでも参考になれば幸いです。

発達障害のある方の金銭管理術一覧

▶ (1)なぜ金銭管理が苦手なのか?

▶ (2)金銭管理の原則

▶ (3)浪費をいかに減らすか

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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