確認し、体調を整える:(2)発達障害のある方のケアレスミス対策
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
ケアレスミス対策についての2回目になる。1回目はケアレスミス対策として、情報を整理することについて書いたが、今回は「確認する」こと、「体調を整える」ことについて考えたい。
ケアレスミス対策『確認する』
まずは、「確認する」ことについて。
ミスが多いのは仕方ないとして、そのミスを確認することができているだろうか。
この「確認」は、前回の「情報をまとめる」と重なる部分はあるが、どんなことでも都度確認することはとても重要だ。
もちろん、ミスには、チェックできるミスとチェックできないミスとに分かれる。
チェックできるミスについては、なんらかの形で極力チェックすることが大切だ。
私は社会人になったとき、資料を作成したら、必ず1回見直せと言われた。だが、1回見直しただけでは、私のミスはまだ多く残っていた。だから、私は外部に提出しないといけない資料は、必ず2回見直すことにしている。
私はADHDがあるので、実際には締め切りに間に合わないことも多いが、少し時間がある時は一晩寝かせて、次の日新しい頭でチェックをするようにしている。そうすることでミスをより減らすことができるのだ。
また、本当に重要な資料は3回チェックするし、仲間にチェックをしてもらうことがある(お金を払う場合もある)。
そこまでしてもまだミスが残ることがあるのだが、大きなミスは確実に減る。
ただ、ミスがチェックしにくいものもある。例えば私なら、講義中の言い間違いが当てはまる。
講義中の言い間違いが多いのだが、そんな特性を見越して、変な顔をしている人がいたら「何かおかしいところあった?」などと聞くようにしている。
また、長期的に講義を受けてもらう場合は、最初に「私は言い間違いが多いから、気になったら教えて」と言っている。
そうすると、もし私が間違っていたらみんな教えてくれる。
話す時のミスは、事前のチェックはできないが、誰かが教えてくれることで大きなダメージを受けることは少ない。
このように、ミスしたくない部分については、なんらかの確認体制・チェック体制を作っておこう。
ケアレスミス対策『体調を整える』
次に「体調を整える」ことについて。
体調が悪いとミスが起こりやすいことは様々な研究から分かっている。特に問題になりやすいのが睡眠不足だ。
例えば、4~5時間しか寝ていないと、7時間以上寝た場合に比べて交通事故を起こす確率が4.3倍、4時間未満だと11.5倍まで跳ね上がるそうだ。
【参考】https://diamond.jp/articles/-/137413
このように、睡眠不足はミスの原因になる。発達障害のある方はただでさえミスが多い傾向にある。それなのに睡眠不足になると、余計ミスが増える。
では、よく寝ればいいのか。その通りなのだが、そんなに単純ではない。発達障害のある方は、睡眠不足になりがちだからだ。
発達障害のある方が睡眠不足になる理由として、(1)睡眠障害がある、(2)生活リズムが崩れやすい、というものが多く見られる。
(1)睡眠障害がある
睡眠障害は、睡眠に何かの問題がある状態のことである。
不眠症以外にも色々な場合があるが、寝ようとしても寝られない、寝たくないのに寝てしまう、などの困りごとが頻発する場合は、睡眠障害である可能性が高い。
(参考記事:発達障害の睡眠問題、実はほぼ半数が悩む)
私は大学の授業を担当しているが、寝る学生が極力少なくなるような設計にしている。そのため、私の講義で寝る学生はかなり少ない。ただ、通常の寝方と違う学生が時々いる。そういう学生によくよく話を聞いてみると、睡眠障害がある場合が少なくない。
発達障害のある方は、睡眠障害もあるケースが多いとされる。もし、睡眠障害を疑うのであれば、治療の対象になるので、精神科や心療内科で診察を受けた方がいいだろう。
🔽 睡眠障害についてはこちら 🔽
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_sleep.html
引用元:厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト」
(2)生活リズムが崩れやすい
発達障害のある方は生活リズムが乱れやすい。例えば、自分の好きなことに没頭して夜更かしをしてしまうことが多い。夜更かしによって生活リズムが崩れ、睡眠時間が不足してしまいがちだ。そんな風に、ついつい夜更かしをしてしまう方は、どうすればいいのか?
私もついつい夜更かしをしそうになるが、そんな私が心掛けている点が大きく2つある。
まずは朝食を食べることだ。朝食を食べることで体が目覚め、その分夜は眠くなりやすいそうだ。また、起きる時間とは別に、寝る時間にもアラームを鳴らすようにしている。アラームを鳴らす音で、眠る時間だという区切りを自分が分かるようにしている。
ただ、朝のような大きな音をすると目が冴えるので、穏やかな音楽が流れるようにしている。その音楽が流れると、テレビを見ていようが、読書をしてようが、仕事をしていようが全てストップして、寝るようにしている(仕事が間に合っていなくて徹夜することはあるが、翌日は目立ってミスが増える)。
なんにせよ、自分がうまく睡眠時間を確保することは、ミスを減らすためだけではなく、健康のためにも重要である。
🔽 発達障害と生活リズムについてはこちら 🔽
http://www.mdd-forum.net/etc_seikatu.html
引用元:軽度発達障害フォーラムWebサイト
このように、ケアレスミスを減らすためには「情報を整理する」「確認する」「体調を整える」の3点が必要になる。
この3点の根本には、ある共通の考え方がある。それについては次回記載したい。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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