発達障害と仕事について知る
仕事を選ぶときには、自分を知ることがとても大切になります。発達障害のある方の場合、「発達障害の特性」を把握した上で、自分自身の強み・弱みを理解し、自分に合う適職を見つけてほしいと思います。
前提として、発達障害のあるなしに関わらず、人はみんな強みや弱みがあります。
強みと弱みは表裏一体であり、同じ現象に対しても強み/弱みがあります。例えば、一人で黙々と仕事をするのが苦にならず、ずっと一人で仕事が出来る強みを持った人がいたとします。反面、その人は集団で仕事をすることが苦手だとしたらその点は弱みになります。
発達障害の特性を踏まえた自身の強み/弱みを理解し、力を発揮しやすい仕事や環境、必要な配慮を自分自身で把握できるように取り組んでほしいと思います。
発達障害の強みを仕事に活かす
就職を考える際、自分にあった仕事と環境の検討は必要不可欠です。なぜなら、発達障害のある方は、得意・苦手の差が著しいため「苦手なことでも、慣れればできるようになる」といったような一般的な考え方が通用しないケースがあります。
業務や環境のミスマッチは、本人自身にストレスがかかるのはもちろん、周囲も対応に疲弊してしまい悪循環を招きます。したがって、障害特性による強みと、一人ひとりの得意なことと興味関心を活かすことが大切になります。
自分にあった仕事と環境があれば、安定した雇用につながります。
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強み
- 真面目さ、几帳面さ
- 律儀、ルールに厳格
- すぐに行動する
- マイペース
- 視覚情報に強い
- 具体的なことの理解
- 感覚の過敏さ
- 特定の分野での興味関心
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弱み
- 変化への適応、暗黙のルール理解
- 計画的に行動すること
- 集団行動
- 音声情報の処理、言葉の理解
- 抽象的なことの理解
- 感覚の過敏さ
- 興味関心の偏り
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適した職場環境
- 静かな環境、落ち着いた環境
- 予測可能であること、定型業務があること
- 個別の事情に合わせられる柔軟性があること
- 職場環境、勤務時間、仕事内容、支援ツールなどの導入
- 支援者/支援機関との連帯、本人との話し合いなど
- 職場に理解者、キーパーソンがいること
- 適度に休憩ができること
- 興味関心や得意な知識、
スキルが生かせること
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適した仕事の例
- パソコン関係
- 事務、オフィス周辺業務
- 印刷などの機会操作
- 組み立て/修復、分解
- 倉庫、バックヤードなどでの仕分け、陳列など
- 研究職
- 製造業や流れ作業などのライン業務
- 調理関連業務
- 清掃作業など
仕事を行う上で必要な工夫・配慮
発達障害の特性による働きづらさを感じることがあると思います。ご自身の障害特性を知って、必要な配慮を理解し、周囲に伝える事が大切です。周囲から適切な配慮を受けられれば、ご自身がもつ働きづらさが軽減し、強みを活かして社会で活躍しやすくなります。
▶ 働きづらさの例
- 相手に伝えたことに対して、なぜ相手が怒っているか分からない。
- 手順がある仕事/同時並行の仕事に対して、段取りを立てて物事を進められない。
- お客さんからの依頼に対して、上司に相談せずに決めてしまい、後でトラブルに。
- 電話での伝言を頼まれたが、話を聞きながらメモを取る事が出来ない。
- 興味があることに頑張りすぎて、気づけば体がぼろぼろ。
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▶ 自己理解
必要な配慮を理解するための第一歩がご自身の障害特性の理解です。発達障害と言っても人それぞれ特性は違いますが、その特性に対する自己理解と他者理解のズレが大きいほど、社会生活は困難になります(例えば、ご自身は困っているのに、他者は困っていないと感じている)。
自己理解と他者理解のズレが大きい場合に現れる課題として、周囲の助言を受け入れられない、困っている状況(自他ともに)に気づかない、現実的な選択ができないなどがあります。 -
▶ 必要な工夫・配慮
ご自身や周囲が出来る配慮や工夫には様々なものがありますが、代表的なものをいくつかご紹介します。
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✅ 視覚的なコミュニケーションを行う
発達障害のある方は、目で見る情報(視覚情報)が伝わりやすいため、例えば、図や文字、映像で伝えるなど、口頭情報に頼らないコミュニケーションを行います。
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✅ 経験する機会を増やす
発達障害のある方は、「経験により学ぶ」という特性があり、様々な経験をするによって成長していきます。したがって、まず体験してみながら、「適切な行動をそれぞれの場面で覚える」、「行動のレパートリーを増やす」ことを重視します。
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✅ 仕事の手順・指示を明確化する
発達障害のある方は、見通しを伝える事で安心して仕事を行うことができます。したがって、仕事の手順や納期・予定を明確にして理解する(伝える)事で、働きやすくなります。また、複数の指導者から指示を出されると混乱する事もあるため、仕事の指示は出来るだけ限られた人からの方が望ましいです。
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✅ こだわりを活かす・上手く付き合う
興味・関心・本人がこだわるやり方を重視し、結果がよければプロセスは問わないなど、こだわりと上手く付き合う事が必要になります。
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✅ 刺激への配慮
照明や音などの刺激に弱いケースもあり、例えば、照明に対するサングラスや、音に対する耳栓のように刺激を遮断する事も必要になります。
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✅ 肯定的に伝える・認める
物事を否定的にとらえやすいという特性があるため、何かを伝える時は肯定的な表現で伝える事で、物事を前向きにとらえやすくなり、モチベーションの維持や成長促進に効果があります。
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発達障害とは?
発達障害は、生まれつきの脳の機能障害です。中枢神経系の何らかの機能不全で起こると推測されています。親の育て方や環境によって起こるものではありません。
発達障害は、人によってその特性の表れ方は様々で、障害特性がはっきりしている方も、それぞれの特性が重なり合っている方もいます。
▶ 発達障害者支援法の定義
自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの
発達障害には、
- 自閉症スペクトラム(ASD)
- 注意欠陥多動性障害(AD/HD)
- 学習障害(LD)
などがあります。
Point1 生まれつきの障害
📜 育て方や家庭環境が直接の原因ではない
📜 発達の「遅れ」ではなく、「偏り」がある
Point2 心の病と混同されやすい
📜 発達障害の2次障害として心の病を患っていることもある
📜 専門の診療機関が少ない
Point3 社会に出てから分かる、気がつく
📜 子どものころは大人しくて目立たない、もしくは少し変わっている子と認識される
📜 働き始めてから、これまで距離を置いていた人間関係、コミュニケーションが身近なものになり、その困難さが一気に表面化するケースが多くみられる
Point4 外見上では分かりにくい
📜 本人や家族自身も気づいていないことが少なくない
📜 高学歴な人ほど、努力が足りない、我慢が足りない、わがままと評価されることもある