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大人のASD(旧アスペルガー症候群)の治療ってできるの?

【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。

 

ASD(旧アスペルガー症候群)を直接治療する方法はないが、生きづらさを改善する方法はある

発達障害は治療できないのか?これは難しい問題である。
今回は大人のASD(旧アスペルガー症候群)の方の治療について見ていきたい。

まず、発達障害は脳機能のアンバランスさが原因で起こることで、基本的には一生治らない。しかし、薬物療法や心理社会的療法によって生きづらさが減り、社会適応しやすくなる可能性は十分にある。

薬物療法で二次障害を治療する

まず、薬物療法についてだが、ASDを直接治療するための薬は存在していない。ADHDについては、薬があり成人適用もされているので、その点はASDとADHDでは大きく異なる。
では、ASDに薬は不必要なのだろうか?そんなことはない。

ASDを直接治療する薬はなくても、発達障害が原因としてそのストレスなどから新たな疾患を患うことがある。これを二次障害と言うが、二次障害を治療する薬はある。私が会ったことのあるASDの方だけに限定しても、うつ病や不安障害を治療するために薬を飲んでいる方は少なくない。

心理社会的療法で社会性を身につける

次に、心理社会的療法だが、特定のプログラムを受け、対人関係の構築や社会性を身につけていくアプローチである。グループで実施している場合もあるし、個人で受けることができる場合もある。代表的なのは、SST(ソーシャルスキル・トレーニング)で、社会で生活していくための技能を身につけていくプログラムだ。ASDのある方は、社会性の面で問題が生じることが多い。SSTではロールプレイなどを通してどんな場面でどんな振る舞いをすればいいのかを体感して身につけていくことができる。

SSTを受けたい場合は「SST 病院 ○○(地域)」「SST 大人 ○○(地域)」と調べると、居住地域の周辺でSSTを行うことができる病院を見つけられることがある。

社会心理的療法については、ASDのある方の中には効果を疑ってかかる人もいるようだ。だが、私は有効だと感じている。私はADHDだが、精密検査を受けた時に一部だがASD傾向が見られると指摘された。そのため、大学を卒業して企業に就職した時、社会的に適しているとされる行動をとるのが苦手だった。同期の仲間がどんどん仕事をこなし社会人になっていくのに、私だけ社会人としてふさわしい振る舞いができずに苦労した。

発達障害のない方が自然と身につける社会性について、私は多くの失敗し、反省し、理屈化することで時間をかけて身につけてきた(今でも、非常識な行動を取っていることは多いらしいが…)。SSTでは、社会的な振る舞いについて構造化され、体験することで身につけることができるようになっているので、ASDのある方は活用されたらいいのではないかと思う。

治療や改善には、知見のある医師や専門的な機関が頼りになる

これらの治療を受けるために、何はともあれ、まずは発達障害に対する知見のある医師のところに行くことをオススメする。二次障害も含め、自分の状況を改善するために、何らかの医療的な手助けを受けられることが多い。
その他、発達障害に関する支援を専門的に行っている機関を頼るのも手だ。医師やトレーニングを受けることのできる機関など、何らかの形で生きづらさを改善するヒントをもらえることがある。
(参考:<支援機関を探す>

すでに行動している方からすると、医師や機関を頼ることは当たり前のことに感じるかもしれない。しかし、ASD傾向を自覚していたり、疑ったりしていながら、動いていない方が多いように感じている。

発達障害を治療していくと、生きづらさが大幅に改善していくこともある(簡単には改善しないことももちろんある)。
生きづらさの改善を求めて、少しの行動を起こすことは決して無駄にはならないように感じる。

 

【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。

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