忘れがちな重要ポイント~(2)発達障害のある方が転職時に考えるべきこと
【執筆者】かめたーとる
【プロフィール】
ADHD当事者。大学でのキャリア教育や就職活動支援、企業での障害者雇用の研修講師を務める。
発達障害のある方が転職をするときに何を考えた方がいいのかについて、全3回に分けてお伝えしていく。
1回目の「そもそも転職をするべきか~(1)発達障害のある方が転職時に考えるべきこと」の続きで、今回は転職を決意した後、具体的にどうするかについて書きたい。
発達障害のある方の転職の具体的な方法
ライフプラン・キャリアプランの設計
転職を決めた時に案外多くの人がやらないのが、ライフプラン・キャリアプランの設計だ。自分が今後どのように生きたいのかは、転職する上でしっかりと考えた方がいい。
なぜライフプラン・キャリアプランの設計をした方がいいのか?
今度どのように生きるかを明確にしておくことで、応募する企業が変わり、面接で言う志望動機もより自分にとって納得度が高いものになるからだ。
一方で、ライフプラン・キャリアプランがなく転職活動をすると、方向性が不明確なままで、自分にとって真に重要ではない選択軸で企業を選びがちになる。
発達障害、特にADHDがあると衝動性が高く、その日その日を生きることに集中してしまいがちになる(もちろん私もそうだ)。
そんな人こそ、ぜひ転機のタイミングでライフプラン・キャリアプランを考えておきたい。
私は1社目から2社目に移るとき、「とにかく現状を変えたい」という想いばかりが強く、キャリアプランのことを全く考えていなかった。
2社目で私は地獄を見ることになるのであるが、今から冷静に考えれば、当時の自分の描く理想像に全くつながっていなかった選択をしてしまったことになる。
では、どのようにライフプラン・キャリアプランを設計するべきなのか?
インターネットで「キャリアプラン」と調べたら様々な手法が出てくるので、自分に合いそうな方法でやってみるのがいいだろう。
(なお、「ライフプラン」と検索すると、マネープランばかり出てきて憂鬱になる。重要ではあるが。)
私が個人的に気に入っている方法は、理想の10年後をできるだけ詳細に描く方法だ。
30分程度かけて、10年後に自分がなっておきたい姿を仕事・プライベートともにできるだけ多く箇条書きにする。
そして次の30分で、それを実現するためにどんな企業に転職をする必要があるのかを、できるだけ多く箇条書きにする。その後、その中で重要度が高いものを5つずつ選ぶのだ。
このようにライフプラン・キャリアプランを描くことは大切だ。ただし、ASDの方の中には、このライフプラン・キャリアプランの設計が苦手な方もいる。
いくつかの方法を試してみて、どうしても書けないのであれば無理をする必要はない。
信頼できる方に支援を受けながら就職活動対策を行う
次に、ライフプラン・キャリアプランがある程度見えてきた次は、就労形態を決め、企業に応募し、就職活動対策をすることになる。この働くチカラWEB内に関連する情報は多く掲載されているので、ここではそれには触れない。
興味があれば特に、「一般雇用か障害者雇用か」「面接対策(1)~概要編~」あたりはぜひ読んでもらいたい。
この就職活動対策で最も重要なことは、「信頼できる支援者に応援してもらうこと」だ。
このブログでは何度も書いていることで恐縮なのだが、何度でも繰り返したい。転職活動支援の専門性を持ち、かつ何でも相談できる人が一人いるかいないのかで、転職活動がうまくいくか/いかないかは大きく変わる。
履歴書・職務経歴書の添削や、模擬面接練習はやはり丁寧にやっておきたい。発達障害のある方は、就職活動でピントを大きく外してしまうことがある。これは、私が転職活動講座講師、模擬面接官、外部委託の面接官をやってきた経験を踏まえた偽らざる感想だ。
発達障害があればピントを大きく外してしまう可能性があるからこそ、就職活動対策には丁寧に取り組んでおきたい。そんな時に、自分が信頼できる支援者の力を借りながら、社会のピント内に納めていく作業はとても重要だ。
また、転職活動はその性質上、孤独になりやすい。特に発達障害があり、コミュニケーションに苦手意識がある場合はなおさらだ。そんな時に、支援者の存在は、自分が折れずに就職活動を続けるためにも重要だ。
では、支援者をどうやって探せばいいのか?
支援者は意外と色々なところにいる。ハローワーク、その他公的就労支援機関、民間の人材紹介会社、就労移行支援施設など、様々な場所にいる。
組織の性質によって支援の受けられる内容、手厚さは様々だが、自分にあった団体の自分にあった支援者を探そう。
【関連情報】支援機関を探す
障害者雇用がメインにはなるが、最も手厚い支援を受けられるのは就労移行支援施設だ。
スタッフから個別の手厚い支援を受けられるだけではなく、様々な教育を受けることができ、同じ苦しみを共有しながらともに就職を目指す仲間ができ、実習先・就職先の紹介を受けられることもある。
どちらにせよ、信頼できる支援者を見つけ、一緒に就職活動を行っていこう。
そして次回は、転職活動をする上で避けて通れない、障害特性への向き合い方について考えたい。
【かめたーとる】
ADHD(注意・欠陥多動性障害)の診断を受けた当事者。大学卒業後、金融機関を経てベンチャー企業に出向。そこで不適応を起こして逃げるようにフリーランスに。小・中学生対象の塾講師を経て、現在は様々な大学でキャリア教育、就職活動支援の講師をメインに仕事を行なっている。特性上、数々の失敗体験、不適応体験を持つ。発達障害者の就労、ADHDの特性の記事などを担当するはずが、思いつくままに記事を書いている。
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